プログラマー回顧録(4)

~ エンデベッドシステム開発経験を回顧する ~

静寂の深夜待機、リリースの瞬間を待つ

「おはよう。それじゃあ、準備しようか。」

後輩と軽く言葉をかわす。

「はい。」

後輩は勢いよく検証室へと向かっていった。

リリースで問題が起こった際に再現確認できるよう現地と同じ環境を用意し、リリースの時を待つのである。

後輩が去った後、別のエリアで待機している2次請負企業のプロジェクト担当者に挨拶に行く。

「おはようございます。よろしくお願いします。」

「おはようございます。なにごともなければいいですね。」

軽く談笑する。

2次請負企業の社員で深夜待機に参加しているのはソフトウェア担当とプロジェクトマネージャー、プロジェクト責任者補佐の計3名。

そして、更に1次請負企業の対策本部に営業1名が出向き、リリースに備えていた。

3次請負企業の待機メンバーは俺と後輩の2名だ。

良く言えば選抜メンバーとなるが、実態はハードワーカーである。

とはいえ、それ以外の開発メンバーは何をしているかと言うと通常の日勤を終えたうえで電話待機である。

それはそれで大変だ。

現地リリース、1年に1回のこの日ばかりは問題が発生すれば電話一本でいつでも駆け付けるスクランブル状態となる。

何も起きなければ問題ないのだが。

検証室での作業を終え、後輩が戻ってくる。

時は刻々と進んでいた。

ときどきリリース手順に関する問い合わせが入っていたようだが特段の動きはない。

AM3時を迎えた。

しばらくの沈黙が続き、一報が入る。

プロジェクトマネージャーから報告を受ける。

「プログラム切り替えが成功しました。」

待機メンバーに安堵が訪れ、まばらな拍手が起こる。

このときにはまだこの後に最悪の事態が起こることなど知る由もなかった。

これは個人的体験談を元にした回顧録です。企業名、人名などは架空の名称です。
毎週日曜日更新。
随時、加筆、修正を行います。

投稿日2022.02.13更新日0000.00.00